別棟備忘録4

*

東レFile1「申請書提出」

      2016/01/09

東レへの挑戦を考えたのは2011年8月。鹿児島で行われる理科の全国大会での発表準備を進めている頃であった。「Wiiリモコン」での演示実験の内容での発表を企図したが、なかなか思うように準備が進まない。そんなとき…
「発表」は「実績作り」であり、内容は問われない。
といった趣旨の第三者の言葉に、半分納得し、半分疑問に感じた。
そして、その言葉を反芻するうちに、
こうして準備した内容が、高校の理科教育を前進させる先駆的な取り組みであるのか、単なる自己満足であるのかを評価してもらいたい。
という思いが強くなった。本業はかなり忙しく、プライベートでも8月は家族が増えるという大変な時期であったが、「Wiiの内容で挑戦するならば今年がラストチャンス」と自分に言い聞かせ、申請書の執筆にかかった。
申請書のフォーマットは東レのページから記入上の注意点とともにダウンロードできる。申請書の提出締め切りは9月末日。
申請者は、申請書のフォーマットである次の4つの観点にそって、研究実践内容を再評価し、申請書を執筆する必要がある。
1.申請内容の背景とねらい(A4_1枚)
既存の事例との違いを明らかにすることを強く求められる。既存の事例を調査し、その問題点を明らかにするとともに、それをいかに解決しているのかを記述する必要があり、既存の事例に対するある種の批判的視点が必要とも言える。
2.申請内容の説明(A4_1-5枚)
「ここの記述だけでだけで内容が理解ができるように」記す必要がある内容説明。最大A45ページ。2次審査は後述のとおり時間的制約が厳しいので、「冗長にしない」との但し書きはあるものの、盛り込むべきは盛り込んでおいたほうがよいと思われる。
3.学習指導における実績(A4_1枚)
2.との棲み分けに苦労する。内容を濃いものとするには、「教材を使って、このような実践展開をしました。」という例を少なからず積み上げていることが求められる。研究色が濃いものに関しては、このあたりが苦しい。授業のみならず、後述のようにおもしろ科学実験などで教材として取り上げ、様々な対象の方への影響を探ることで、内容の幅が広がる。
4.学習指導における効果(A4_1枚)
3.との棲み分けに苦労する。同じく研究色の濃い申請にはつらい。内容の密度を濃いものとするには、生徒の定性的な反応のみならずアンケート等を用いた「数字」を示したい。
これ以外にも、申請書を書く上での注意点はかなり事細かい(さながら「注文の多い料理店」を彷彿とさせる。)。単なる教育提言や教材研究ではなく、「内容のどの部分がオリジナルなのか」「既存のどのような問題を解消しうるか」「学習者に対してどのような影響を与えるのか」といった部分を重視する方針が垣間見える。
この研究・教材には果たして意味があるのだろうか?
という自己嫌悪に苛まれながらも、過去の実践を思い出し、先行事例を調べて違いを整理する作業が続いた。
幸運であったのは、過去の自分の課題研究の中で、視聴覚教材としてのWiiリモコンおよび加速度表示アプリケーションの効果を調査した内容が活用できたこと、そして、このブログでの備忘録的書き留めを通して過去の取り組みがある程度形になってまとめられていた点である。
なんとか書きあがった申請書「Wiiリモコン教材化の模索」の一部.pdf
申請書では、特に優れた先行例であるWiiAccとの差別化(目的の違い、ともいうべきか)を意識した。また、3.については内容がやや不足し、「おもしろ科学実験にこのあと出展します」という(この時点での)「今後の予定」を記述せざるを得なかった。
申請書は念のためカラー、白黒それぞれ1部。その他に、youtube等にアップロードしてあった動画をCD-Rに焼き、添付資料として提出した。なんとかかんとかの期限4日前。本業が忙しくなりつつあり、これ以上は申請書に時間を割けないという状況であった。
とにかくただ「申請書を書き上げ、申請にたどり着いた。」ということに大満足で、選考の結果などその後のことについて思いを馳せる余裕はなかった。
第2話につづく。

 - 東レ理科教育賞への挑戦