別棟備忘録4

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大学の風景 長岡造形大学

      2016/01/09

「良いデザインのもの」がありふれた環境にあることにふと気づいた。
一体いつごろからそうなったのか。
ヒット商品だけでなく、ヒットしない商品も含め、デザインの工夫を放棄したものはない。
デザインは気取ってやるものじゃなく、必須の、あたりまえに求められるものになりつつある。
昨今、ロゴマーク、ユニフォーム、パンフレット、ホームページ等々の製作、意思統一作業をしていると、自身のデザイン感覚の鈍さに頭を抱えることもしばしばあり、要するに…。
長岡造形大学の見学に行って参りました。
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長岡造形大学は、長岡市によって設置された私立大学であり、平成26年度より公立化される予定。
造形、平面デザイン(パンフレット、Web等)、プロダクトデザイン、建築デザインを学ぶ4つの学科有。
特に建築デザインで+実務経験2年での1級建築士受験資格を得られる、という情報に興味を持ち、生徒と共に見学。
外見。かっこいい。
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当日突然の依頼でありましたが、広報の方に大変丁寧に応対していただくことができました。
応接室。
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建築家が作成した机、椅子。なぜ建築家が?と思いきや、良い建築物を造れば、それに合うインテリアを置きたいと思うのは、建築家として自然、と。納得。
・1年次に造形の基礎を学ぶ授業「基礎造形」が4学科必修。建築家志望でも造形志望の学生と共に絵を描き、粘土をこねる。
曰く、お客様の前でドローイングしてそのイメージを即示せるような建築家になってほしい、と。
・そうした指導をするから、着眼点が磨かれる。
・それが「無駄」と感じたり、嫌だと思うなら工学部の建築学科にすすんだほうがいい
・造園から、インテリアまでこなせる建築家を目指してほしい。
案内していただいた校舎内。エントランスの壁にあるシアンはスクールカラー。
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それ以外は白い壁か、打ちっ放しコンクリート。曰く、色についての先入観や固定観念を持たないようにするためであるという。
図書室。
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エレベーターや自動ドアなど、ブラックボックスになっていることが可視化されている。
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長岡で育つような園芸用樹木のほとんどが植えてあるというお庭。
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造園時に必要となるそれぞれの樹木の季節による移り変わりの感覚を図鑑でなく、実際にみて学び感じてもらうためだという。
食堂の壁面はガラス張りで、庭が見える。
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フレームがなく、4点とガラスの強度でささえる構造になっている。1枚傷つくと、全部交換になりかねない。数千万円の出費になる…とのこと。
椅子はアルネヤコブセンのセブンチェア。1955年からある息の長い商品。曰く、「日常的に良いものを使うことで、良いデザインが分かるようになる。」
学内には、卒業制作などを展示するスペースが多くある。
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学校というよりは美術館にいるような気分になる。
こちらの階段も学生が制作に関わったものらしい。
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もともと階段のなかったところに、利便性を考えて調和する階段を設計。
普通のものと違って、このらせん階段には、中心の棒が無い。
曲げ木で作られた外のフレームが全体を支える構造になっている。また、釘が使われていないのも特徴。
「すごく手間のかかる作品で、プロは嫌うだろう。学生ならではの発想。」
文化財模型
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文化財修復についても学ぶことが出来るのが、この学校の特徴。こうした模型については、「小さければ安いだろう」というのは先入観で、「基本的には重機をつかうか、どうかの違い」その造りを忠実に再現するには本物と変わらない苦労と手間がかかる。中には家一軒建つ値段の模型もあるそうだ。
動画編集を学ぶ部屋
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椅子が全てデュオレストチェアである。椅子を題材に、デザインのミニ講義をしていただいた。
デュオレストチェアはまずその外見で、人を惹きつけるものがある。座ってみたくなる。
とりあえず、手に取ってみたい、触れてみたいと思える外見はプロダクトデザインにおいて非常に大切。
そして、その機能性。座り心地が非常に良い。→買いたくなる。
デザインを押しつけるような商品は良くない。デザインと機能性が高い水準で融合してこそ、の好例である。それがさりげなく配されているのは食堂の椅子同様。
加えて、
「デザイナーに資格はいらない。それより大切なのは、利用者、使用者に寄り添う思いやりの心、気持ちなのだ」と。そして、そうした建築家デザイナーを育てたい、というのが長岡造形大のスタンスらしい。
フォトスタジオ。
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授業で使うのみならず、学内で何が撮りたいものがあったときにも使用する。「カメラが好きになる学生が多いですね。」
アトリエの様子
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「基礎造形実習」の風景
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平行に見えてはいけないんだけど、平行に見える階段。
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写真奥側がやや広く作られているんですね。
素人ながら、なるほど、こうしたところで生活すると、感性や発想力、着眼点が磨かれると感じられる雰囲気。
こんな大学が公立化されるとは。というのが、正直な感想です。
…今からでも入学したい気分になりました。
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なんとなく、結局「デザイン」というとひとつまみの絵の得意な人だけが関わる領域、マイナーな領域という印象をずっと持ってきたのですが、ここにきてこうした大学を見学させていただくと、様々な形で自身のデザインセンスが試されていることに気づかされます。
具体的に学校の業務で言うと、配布プリント、パワーポイントスライド、学校パンフ、掲示物、板書計画等々思いつくだけでも数多く、、そしてまたそれを短時間でセンスの良いものに仕上げないといけない時間との勝負、です。したがって、教員とはいえデザインセンスを高める努力が求められている、ということなのでしょう。
特に昨今の生徒達は、スマートフォンなどで日常的にセンスの良いデザインに触れる機会が多いので、無意識かも知れませんが、その目が肥えている、ということも見逃せません。
また、学校環境も大切。何となく高校だと授業改善ばかりに労力時間を重点的に割きますが、何を掲示するか。どんなものを置くか、など。「着眼点」と「感性」の育成には心を配るべきかもしれません。

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