シリコンバレーの「エコシステム」
「エコシステム」というのは、元来は生態系を意味する科学の用語ですが、シリコンバレーにはイノベーションを生み出す経済的好循環が存在し、エコシステムと呼ばれています。なるべく簡単に説明しますが…
桝本さんの講演でもたびたび登場するクイズ
Q「会社」にとって、1番の商品とはなにか
普通に考えたら、1番人気の商品?とか、1番売り上げのある商品?とか思ってしまうけど、さにあらず。実は、「会社」それ自体というのである。というのは、昨今「会社」はベンチャースタートアップとして産声を上げ、そこから投資によって成長する。その会社が株式市場に上場するか、大きな企業に買収されるかすると、そのベンチャー企業のサービスが世の中に定着するとともに、企業者や投資家が大きな利益を得て、その利益がさらに次なるベンチャースタートアップ企業の投資に向かう構図。これが、シリコンバレーに投資が集まる「エコシステム」である。
すこし込み入った説明をすると、まず、それぞれのベンチャー企業はこれまでに集めた投資の積算額によって、おおまかに「投資ラウンド」が決まっている。(相撲の番付のようなイメージ)
はじめスタートアップ企業はSeedという投資ラウンドで、新規の商品構想やアイディアを武器に、資金調達する。概ねこれらの投資は、新株の発行という形で行われる。社員は、発案した社長と、その友達といった具合。この段階でその事業構想が投資家などの共感を得て、1億円の出資を得られたとしたら、その会社の企業価値(≒株式の時価総額)は大体5億円程度の評価を受ける。
するとレベルアップしてSeriesAというランクになる。このランクの企業は、商品のテスト版にあたるβ版を世に送り出す段階にある企業が多い。この段階で投資家に認められ5億円ほど投資資金を調達することに成功したら、概ね企業価値は20億円程度となり、SeriesBに移行する。
SeriesBのランクにある企業は、商品をすでに送り出し、顧客を獲得しつつ、さらに機能拡充を図る段階にあることが多い。この段階で10億円の資金調達に成功すれば、企業価値は50億円程度になる。
そして、次の段階では、ここまでに獲得したノウハウや顧客、市場での存在感を背景にして、新商品の開発に挑むような状態になる。ここでさらに資金調達をしてもいいのだが、ここで500億円程度の価値にまで成長した企業は、しばしばその企業の商品と従業員ごと大手資本に買われたりする(M&A)。あるいは、株式を上場(IPO)することで、株式を現金化できるようにする(それに伴って株価が上昇する)。このいずれかの「ゴール」に達することをExitという。
この間に、企業の株価は徐々に上昇するので、初期に投資をした投資家ほど、所有する株式価値の増加率が大きい。最初に株をもっているのはおそらく創業者や、共同創業者に近い人物、あるいは企業の黎明期にその価値を鋭く見抜いた投資家である。それこそ、最初の投資額の、500倍や、1000倍といった資産を形成することになる。(そして、次の投資先を探す。)逆に、SeriesBなど、ある程度企業としての価値が確立した後に投資した投資家にとっては、せいぜい数倍程度の利益となる(それでも大きいが)。
手塩にかけて育てた会社を売ってしまっていいの?とか、自分で作った会社の社長でずっといたいと思わないの?とも思うが、自分が作ったサービスが世に広がっていくことが目的ならば、それを自分でやる必要はないし、挑戦を生きがいとする人にとってはある程度の成功をなした時点で、興味対象は別のものに移ってしまうことも「普通」のことなのだろう。
例えばyoutubeはSteveChenが立ち上げたベンチャーだが、創業からわずか2年で1900億円でGoogleに買収されExitした。
宇宙旅行にいった前沢さんは、ZOZOを起業したが、最終的にソフトバンクに買われExitしている。ソフトバンクが買ったZOZOの発行済み株式4000億円分のうち6割が前沢さん所有の株式だったとされているので、前澤さんは2400億円を得たことになる。「100億円で、宇宙いこっかな。」ってなるのもわかる。
シリコンバレーにはこのエコシステムをうまく回すための、インキュベーターやアクセラレーター(SeedやSeriesA段階の企業を人材等の面で支援する仕組み)ベンチャーキャピタル(投資家からお金を集めて、成長する可能性の高い企業に投資する組織)が充実している。
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