別棟備忘録4

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金沢大学(自然システム)推薦入試 過去問

      2016/01/09

推薦指導のシーズンが終わり、続々と結果が出始める時期。
志望理由は?高校で頑張ったことは?将来は?高校でどんな理科の実験をしましたか?
最近気になったニュースは?どんな本を読みましたか?
どんな学生生活を送りたいですか?自己PRをしてください!
ここ5年間でノーベル賞を受賞したテーマは?…と練習を繰り返し、送り出された生徒たち。
今年であれば、理系の小論文は「環境問題」「生物多様性」「iPS細胞」あたりをどの受験生も練習したと思われる。
たとえば、「生物多様性」であれば、
・生物多様性とは何か
・生物多様性が失われることは人類にどのような影響を与えるか
・COP10ではなにをしていたか
生物多様性はどうすれば守られるか。。。
そうしたことを一通り必死で勉強した生徒たちに対して、実際に大学が問うたのは、次のような問題だった。


生育に必要な要素が限られた環境中では、最もよく環境に適応できた生物種が、生物集団内で多数を占めることが知られている。
一例として、ともに良く日の当たる土手や河原に生育するススキ(イネ科)と、北米からの帰化植物であるセイタカアワダチソウ(キク科)を挙げることができる。本来セイタカアワダチソウは日本には自生していなかった植物であるが、根や地下茎からイネ科植物などの発芽を抑える物質を分泌することができるため、その土地に生息していた植物を駆逐し、昭和40年代から日本で急激にその分布を広げてきた。
一方熱帯雨林では、集団の多数を占める種というものが見られず、数百種の生物が共存していることがしばしば認められている。ある研究者グループは熱帯雨林における植物の多様性が維持される原因について調査するために、以下の実験を行った。
まず、彼らは熱帯雨林に生息している植生密度の高い植物と、植生密度の低い植物をそれぞれ1種ずつ選びだした。そして、2種の植物各100本の苗木を
(1)同じ種の植物が生育していた土壌
(2)他の種が成育していた土壌 
(3)それらを100℃以上の高温で処理した土壌
に植えて、生育を比較した。この実験は熱帯雨林の環境と同じ条件に保った温室の中で実施され、以下の結果が得られた。
a 他の種の植物が生育していた土壌に苗木を植えたときに比べて、同じ種の植物が生育していた土壌に苗木を植えたとき、2種とも苗木の生育が抑えられた。
b 100℃以上の高温で処理した土壌に植物を植えると、aで見られた苗木の生育が抑えられる効果は、どちらの種の植物でも見られなくなった。
c 植生密度の高い種と低い種の植物を比べると、aで見られた苗木の生育が抑えられる効果は、植生密度の低い種の方がはるかに強かった。
上の文章を読んで、熱帯雨林の植生の種の多様性が維持される理由について、日本の河原ではセイタカアワダチソウが生物集団の多数を占めるようになった理由と比較しながら、500字以内で述べなさい。
(用語解説)
植生:地球上の陸地において生育している植物の集団。
熱帯雨林:年間を通じて温暖で雨量の多い地域に形成される植生。
植生密度:単位面積あたりに生育している植物個体数。

…何を答えればいいのか自分には正直分からんかったので、回答は書きとめず。(熱帯雨林の植物は自己抑制の「毒」を出すのに対し、セイタカアワダチソウは他を抑制する「毒」を出す、という対比は単純すぎ?近年セイタカアワダチソウは勢力を衰退させており、その原因が自身の毒にある…とすれば、結局両者同じではないか…云々)
問題の内容はともかく、強く感じたのは、「これが近年のトレンドなのか…」ということ。
生物多様性はどうすれば守られるかといった地球規模の大問題の解決策を高校生に問う、なんて無茶は流行らない、ということか。
それより、要約、問題点の把握、論理的な思考力が大事、と。
…でも、こんなの、どうやって「指導」すればいい?
もうそうなると、教員が「正しい知識」と「小論文の適切なフォーマット」を生徒に与える、という付け焼刃の小論文指導は全く通用しない、という訳ですな。
推薦入試では「18年間の人生で、何を体に染み込ませてきたか」が問われる、と。
がんばれ、高校2年生。すでに戦いは始まっている。
…というか、始まって17年経過している。。。

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