別棟備忘録4

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はく検電器と静電気の実験 先輩に聞く⑤

      2016/02/18

前回バンデグラーフを指導して頂いた後、「今度は静電気をやってみましょう」という話になる。

摩擦電気の演示
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授業でものをこすって静電気を帯電させる際、先生は

●毛皮(+)でエボナイト()をこする
●絹(-)でガラス()をこする

この2種類しか基本的にはやらないとのことである。教科書には複数の素材について相対的な正負の帯電のしやすさが記載されているが、あまり多くやると生徒は複雑で混乱する。そのため授業では「様々に帯電する」ことは示す一方で、「エボナイトは必ず負、ガラスは必ず正」に帯電させるという。また、傍にクーロンメーターを置いておくことで、ちょっとしたときにその正負が確認できるようにしておくと良いという。

回転台で実験する。こうした実験では(見た目には)異種符号か、同種かしかわからないが、棒の種類と紐付けして正負がはっきりしていた方がやはり現象を捉えやすい。
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(この後箔検電器にエボナイトをこすりつけて帯電させた後、さらにそのエボナイト棒を近づけるとはくはどうなるか、という話題になる。実際やってみると、「一旦閉じてまた開く」という不思議な現象に遭遇。結局確信をもった分析ができず。後日再実験の覚え書き。)

ストロー検電器
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先生お手製のストロー検電器を紹介して頂いた。3本の細いストローとまち針、台で作る。台にはストローの径よりもわずかに小さい穴があいていて、ストローを差し込むと安定して立つ。そして、まち針をさして水平にセットしたストローAと手持ちのストローBをティッシュペーパーでこすって互いに近づける…と、とにかく驚くほど軽快に動く。
ストローA両端が赤と青に塗られて、区別できるようになっている。「こするととれてしまうから、必ずストローの内側に着色する」という。いかにも先生らしいひと工夫である。

(ストローがフレームアウトしているところは、ティッシュでこする作業中です。)ストローBの表面に油性マジックを塗ってからティッシュでこすると、逆の挙動が見られるようになる。そのものの素材ではなく、あくまで表面が大切であることが分かる。

光電効果の実験
はく検電器の上に亜鉛板をおいてやってみる。亜鉛板の表面をみがいておくことが大切。学校にあった400番台のやすり(粗め)でみがくとやや傷がついたようになってしまったが、それでも「さびているよりはいい」とのことである。図はさらに、練り歯磨きで磨いている様子。
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波長がある程度以上短い(=エネルギーが大きい)くなければ現象は見られない。この波長(限界波長)は照射する金属の仕事関数によって定まる。仕事関数の値は文献によって若干異なる。角度や表面の結晶構造等によるらしい。
wfpdfファイルはこちらから。限界波長(nm) = 1240 / 仕事関数(eV) の換算式が便利。

紫外線はブラックライトや殺菌灯で照射する。
紫外線についての説明はこちらのほうに詳しい→ブラックライト専門店 トリックポスタードットコム
蛍光灯タイプのブラックライトで300nm~400nm程度(ピークは360nm)紫外線LEDは375nm程度の波長の光を出す、とのこと。限界波長と照らし合わせれば、ブラックライトではぎりぎり光電効果がみられることになる。ただし、一般には現象顕著とすべく波長254nmの紫外光を発する殺菌灯が用いられる。

光電効果の実験風景
検電器の上に亜鉛版を置き、殺菌灯で紫外線を照射する。

島津理化製 はく検電器

まずなかなか帯電させられないでいたところ、「下から上にそぎ落とすようにする」やり方を伝授していただいた。(この動画最大の見所。ここまで違うものか、と驚いた。)
また、同じ殺菌灯を使うにしても、カバーがある状態だと現象顕著とならない。外しましょう。

●残された謎(陰の苦労)
学校にあった内田洋行製 はく検電は現状なぜか全くはくが閉じない。繰り返しやっても、金属板をいくら磨いても、複数個検証しても、はくは閉じない。。

実は今回先生に「光電効果」というベーシックな実験の指導をお願いしたのは、恥ずかしながら今までこの学校では光電効果の演示をすることができていなかった(予備実験で成功したことがなかった)為である。原因について金属板の磨きが足りないことや、殺菌灯の光量が少ないことなどを考えていたが、今回それが「検電器自体に何かしらの問題がある」為ではないか、というところに至った、という訳である。
これに関しては後日問い合わせの予定。
追記
問い合わせたところ、内田洋行のカタログ記載の検電器を作っている工場?では製品の全数検査を行っているが、それはあくまで静電気によって箔が開くか、閉じるかの検証であるとのことである。光電効果については検証をしていない(そもそも、検電器の用途としての光電効果の演示を把握しておられない様子だった。)が、光電効果の演示ができない、という問い合わせが寄せられたことはないという。

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