バンデグラーフのお手入れと演示 先輩に聞く④
2016/02/07
前回からさほど間をおかず4度目の来校。多忙な中熱心にご指導いただいている”先生”には本当に頭が下がる。前回までの誘導コイルの流れから、今回は同じ「高電圧」でもバンデグラーフ球を使ってみようというのがテーマ。
バンデグラーフは静電気で帯電し、(某ネズミの技を超える)公称25万Vを生じる…といいますが、様々な部分の劣化?(正直これも感覚的な予想にすぎない。)で期待された性能が得られなかったり、そもそも何を演示すればよいのかわからなかったりする。
今日の一品
はじめは紙。しかし、ただの紙にあらず。ポイントは薄いこと。これはOHPシートとOHPシートの間に挟まっていた紙なんだそうです。よくバンデグラフ球に糸やビニルひもをつけて空間の電場の様子を示したりすると思うのですが、幾多の素材を試した結果先生がたどり着いた「結論」がこれだという。幅5mm長さは15cmほど。
バンデグラフにつけて起動。
ゆっくりと紙が立ち上がります。もっとたくさん貼れば点電荷の電場を演示できる。
なお、先生は建材のアルミ板を使って平行極板の一様電場を演示する器具を自作されていました。
なるほど、電気力線の様子が一目瞭然。そして、ビニルひもより”紙”が立つことも一目瞭然。
バンデグラフのお手入れ
ずっと使っていたら、ほこりがたまってそこから放電するようになったり、ベルトがずれて意図しないところとこすれていたりする。
そして、「静電気溜まらないし、買い換えよう。」となったりするものだが、そもそも安くない機器(12万円)であり、それではもったいない。ということで、メンテナンスをしよう!
上下ベルトを外す。先ずは上だけローラーを外す。
よくみると、ベルトがずれて筒とこすれていたことがわかる。→後でツマミをまわして修正
島津製のバンデグラフは上下ともにアクリルのローラーである。したがって、そのままベルトとこすれ合うと[ベルト負vsアクリル正]で双方正となる傾向を持つはず…なのだが、上のローラーにだけコロジオンという薬品が塗布してあり、そちらは[ベルト正vsコロジオン負]で負に帯電するようになっている。それによって、下側のローラーとの摩擦で負に帯電したベルトが電荷を上側に運び、ローラーとの摩擦で正に帯電し…を繰り返すことになる。
追記 したがって、上側、つまりバンデグラーフの球の部分は負に帯電するように作られている。説明書によれば「一層現象を見事に見せるため」であるという。ただ、これでは「正電荷から出る電気力線の直感的演示」にならないことになる。原理的にはコロジオンを逆に下側のローラーにだけ塗れば上は正に帯電するはずだが、果たしてそれによってどれだけ現象が「見事でなくなる」のかは気になるところである。
ローラー部分はほこりがたまりやすく、掃除が必要。ただ、そのときに表面のコロジオンをはがしてしまうと帯電しなくなってしまうことには要注意。
最初はローラーをエタノールで拭浄。あまりきれいにならないので、結局はやすりがけ。2000番くらいが良いとのこと。
上側のローラー。汚れています。つやっと光沢として見えるのがコロジオン。表面をやすりできれいにしたうえで、もう一度コロジオンを塗ります(5%のものを使用)。
片方のローラーにだけコロジオンを塗ることが大切。上下両方塗るといった暴挙はNG。
比較的すぐ乾きますが、乾燥している間に筒の中のほこりのそうじ(放電の原因となったりするらしい)。
アルコールをしみこませたキッチンペーパーorキムタオルで拭きます。
ベルトも拭きます。丁寧に元に戻します。笠の部分も内側と外側をエタノールで拭きます。
驚くほど一瞬で紙が立ち上がるようになりました。ちょっとした達成感。
平行極板の実験もばっちり。
実験機器についてはよく使うものであったとしてもブラックボックス的な部分が少なくない。動作原理についてのあやふやな理解は天下り的な説明や誤解、知識の押しつけにつながる。このように、壊れたり、性能の落ちたりしたものを修理・メンテナンスできることは、それを避ける意味でも大切だと再認識。
宿題
上下の電荷の正負を逆転させるとどれくらい顕著でなくなるかは後日要検証。
→後日談 バンデグラーフのお手入れと演示2nd 先輩に聞く④