高電圧用ワニ口導線(ケーブル)の作成 先輩に聞く②
2016/02/27
前回に引き続きの2日目
時間が無い中来て下さった先生。今回は高電圧実験用の導線の制作を指導していただくことになった。私を含め、通常の赤/黒の導線を高電圧(誘導コイル、バンデグラーフ)の実験に使っている教員は少なくないのではないだろうか。しかし、それでは扱う電圧が導線の耐電圧(おそらく600V程度)をこえるので、「びりっとくる」のはある意味当たり前である。
また、クルックス管などの真空管についている環状の耳はワニ口クリップを挟むことを想定したものではなく、そもそもは針金のような導体を引っかけて使うためのものらしい。先生は、そうした使い方ができるように配慮した導線の必要性を感じ、独自に制作されたのだという。
材料と工作
使用する導線の本体は、オヤイデ電気で売られている
http://oyaide.com/catalog/products/p-750.html
シリコン 0.3sq 20kV (2016.2.27訂正)を用いる。60cm程度の長さとなるように切断し、外径7mm内径5mmのシリコンチューブに通した上で、片方の端にワニ口クリップを、片方の端に被覆を全て剥いだポリエステル導線((径1mm、長さ4cm程度)を半田付けする。(シリコンチューブを通すのは、誘導コイルの電圧を4万Vと想定し、耐電圧20kVではまだ不足という考えに基づく)
ケーブルをシリコーンチューブに通そうとすると大抵途中でひっかかるので、はじめに細いエナメル線をシリコンチューブ内に通し、それにケーブルを半田付けして引っ張ることで通すと確実。写真は引っ張るのに使ったエナメル線。
先端につける太いポリエステル線はやすりで被覆をとる。先生曰く、(紙やすりは番号が大きいほど細かくなるが、800番程度のものが汎用性が高いという。)
なかなか被覆がとれず、苦戦。というのは、銅線がまがっていることが原因で、どうしてもムラができてしまう。…それを見た先生はおもむろにチョークケースを所望される。
チョークケースと木の板の間に導線を挟み、チョークケースをこするように動かされた。すると導線がごりごりと転がり、ほどなくまっすぐになった。
それでも被覆をとれずにいると、カッターの刃の背の部分で削り取る方法を伝授して下さった。ちょっとした工夫や技術は試行錯誤の賜。先生がいかにそれを積み重ねてこられたかが垣間見えた。
全て被覆を剥いだポリエステル線をはんだ付けする。そして、もう片方の端には「ワニ口クリップを半田付けする。」とのことであった。しかし、恥ずかしいことにワニ口のビニル部分を外せず。。過去経験が無いわけではないと思うのだが…やり方が分からなかった。
手順は ワニ口に何かをかませる→ビニルの部分を外す→導線にワニ口のビニル部分をあらかじめ通しておく。→金属部分に導線を挟み、半田付けする→ ワニ口に何かをかませる→ビニル部分を通す。
とする。(写真は工程の最後の部分。)初耳。おそらく今までは力づくでやっていたのだろう。これまた恥ずかしかった。
完成品
工作時間は1時間ちょっと。高電圧の実験には常に「びりっとくる恐怖」がつきまとい、正直億劫な部分もあるが、この導線をつかうだけでその恐怖が(気持ちの面で)低減されるような感じがする。
動作確認
誘導コイルでスペクトル管を点灯させてみましょう。ひっかけて…
(2016.2.27 その後の講習会で、先生の「ちょっとにぎってみてください」という呼びかけに本当に通電中のケーブルをぎゅっと握られた講習生の方。しかし、全く平気の様子でした。ケーブルもその勇気もすごいなと思いました。)
「次回はこの導線を使って真空放電の実験をやってみましょう。」と先生から。楽しみです。→3日目はこちら。